オーストリアの「モナ・リザ」と言われた名画の行方
原題 | Woman in Gold |
監督 | サイモン・カーティス |
出演 | ヘレン・ミレン, ライアン・レイノルズ, ダニエル・ブリュール |
上映時間 | 1時間49分 |
製作国 | イギリス・アメリカ合作 |
製作年 | 2015年 |
ジャンル | ドラマ・歴史 |
あらすじ
20世紀が終わる頃、ある裁判のニュースが世界を仰天させた。アメリカに暮らすマリア・アルトマン(82歳)が、オーストリア政府を訴えたのだ。
「黄金のアデーレ 名画の帰還」公式HP
“オーストリアのモナリザ”と称えられ、国の美術館に飾られてきたクリムトの名画〈黄金のアデーレ〉を、「私に返してほしい」という驚きの要求だった。伯母・アデーレの肖像画は、第二次世界大戦中、ナチスに略奪されたもので、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいというのが、彼女の主張だった。共に立ち上がったのは、駆け出し弁護士のランディ。対するオーストリア政府は、真っ向から反論。
大切なものすべてを奪われ、祖国を捨てたマリアが、クリムトの名画よりも本当に取り戻したかったものとは──?
感想
この作品は、大好きな画家グスタフ・クリムトの絵画が出てくるということで観たけれど絵画に興味がない人でも引き込まれてしまうと思う。以前ご紹介した書籍「失われたアートの謎を解く」にもナチスによる美術品略奪について書かれているが、この映画で実際にナチスの被害に遭った家族の現場を目の当たりにしたような恐怖を感じた。
クリムトは『接吻』などの黄金様式が有名な画家。
その同じ黄金様式の絵画で「オーストリアのモナ・リザ」と称された『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』にめぐる実話を基にした裁判のお話。
この映画にも登場するエピソードとして、ヒトラーはエゴン・シーレが16歳で入学した名門「ウィーン美術アカデミー」に2年連続で不合格になっている。ヒトラーが芸術作品に異常な執着を持ったのは、この少年時代の挫折があったという。もし、ヒトラーが美術生になっていれば…..。
ヘレン・ミレン演じるマリアは、絵画のモデル「アデーレ」の姪。ユダヤ人家族の中で育ったマリアの少女時代は、裕福で幸せに満ち溢れていた。それが結婚した頃になるとナチスの侵攻が徐々に始まり不穏な空気に包まれていく。そして、家の中までナチスが入ってきて見張っている中、夫婦でアメリカへ亡命する。そのぎりぎりの脱出劇は観ていて、本当にドキドキして怖い。この演出は誇張ではないそう。
その後はアメリカで暮らしていたマリアは、姉の死後、叔母の絵の奪還のためオーストリア政府を訴える。新米弁護士にライアン・レイノルズ演じるランディ。最初は頼りなくやる気もないランディがだんだんと火がついてどんどん成長していく。そして、マリアは封印していた過去に向き合っていく。いくつもの障害をなんとか乗り越えていく姿は感動的。そして、両親をおいてアメリカへ渡ってきたマリアが秘めていた悔恨の深さを思い知る。ナチスの美術品略奪という歴史上の出来事がグッと身近に感じ、あまりに酷く今も癒えない傷について考えさせられる。
最後にマリアが過去に会いに行くシーンはとても素敵。心の中に存在する「美しい幸せな思い出」は誰にも奪えない。マリアがどうしても絵を取り戻したかった気持ちがわかるような気がしてくる。
ヘレン・ミレンのいつもお洒落していて凛としている演技はかっこよく、ライアン・レイノルズとのかけあいも抜群。重たいテーマを扱っているが、二人の軽快な演技に魅了され夢中になって観てしまう感動作品。
本ページの情報は2023年12月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。