山田詠美『私のことだま漂流記』

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著者:山田 詠美


1959(昭和34)年、東京生れ。明治大学文学部中退。1985年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。同作品は芥川賞候補にもなり、衝撃的なデビューを飾る。1987年には『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞受賞。さらに、1989(平成元)年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、1991年『トラッシュ』で女流文学賞、1996年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、2005年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を受賞する。他の著書に『ぼくは勉強ができない』『PAY DAY!!!』『ライ麦畑で熱血ポンちゃん』『無銭優雅』『学問』『タイニーストーリーズ』『ジェントルマン』等多数。現代を代表する人気作家である。

新潮社

解説

ラブレターを代筆した幼少期に、辛酸を舐めた学生漫画家時代。小説家デビュー後の誹謗中傷に悩まされた日々と、念願の直木賞受賞、さらに様々な人との出会いと別れ。作家・山田詠美の半生は、波乱と情熱、そして美しい言葉に満ちあふれている。彼女が「小説家という生き物」になり、その後の希代の女流作家になるまでのすべてが、彼女ならではの鮮やかな言葉で綴られた自伝小説

「ダ・ヴィンチ」2月号

感想

 雑誌「ダ・ヴィンチ」2月号の「今月のプラチナ本」でおもしろそうだったので読んでみた。自伝小説ということで「山田詠美のカッコよさ」の秘訣がわかるかもしれないと思って。山田詠美さんの本は昔、よく読んでいて「トラッシュ」「A2Z」「無銭優雅」がとくに好き。今、ちょっとネットで調べていたら、「A2Z」がアマゾンプライムビデオでドラマ化され、主演は深田恭子さんとのこと。意外な気がするけど、どうなんかんじかちょっと気になる。
 あと、女性雑誌「GINGER」で山田詠美さんの「フォー・ユニーク・ガールズ」という連載エッセイが好きで毎月楽しみにしている。
 この本は、山田詠美さんが幼少期から小説家になり小説家になった後から今に至るまでが綴られている。何かのエッセイで読んだ知ってたエピソードなどもいくつかあったけど、バラバラだったエピソードがひとつに繋がっているものが読めるので、壮大な長編小説を読んでいるようだった。
 小学生のころいじめに遭い、読書に救いを見出す。それが小説家になるトレーニングになっていく。

 私は、何かこつをつかんだような気がした。どういう「こつ」かというと、自分を失わずに現実逃避するこつだ。この先も、きっと本は、その恰好のツールになるだろうと予見した。嫌なことがあったって、本さえ読めばいいんだ。そこに飛び込みさえすれば、逃げ切れる。追手から身を守るかのように、私は真剣にページをめくったのだった。

私のことだま漂流記「冒険者もどきになる」

 心が大きく揺さぶられた小説を読んだ後に小説家の頭の中ってどうなっているんだろう?とよく思う。その小説家の裏側をちょっとのぞかせてくれる。

 私は、まさに、水上さんが指摘してくれたようなことを目指していたのだった。事細かに、しつこく説明するのではなく、わずか一行、たったのワンシーンで、その場の情景や漂う空気などを切り取って見せること。そこには、登場する人間の心の動きまですら含まれていること。

私のことだま漂流記「文豪たちに親切を学ぶ」

人によってはグッとくる箇所が違うと思うけど印象に残る一文がいっぱい詰まっていて、お腹いっぱい大満足な気持ちになった。そしてさりげなく元気づけてくれているような1冊。