紗sya一穂ミチさんは、『光のとこにいてね』や『スモールワールズ』などで心を揺さぶられてきた大好きな作家さんです。そんな彼女の『恋とか愛とかやさしさなら』は、今年一番考えさせられた読書体験でした。
2025年12月現在、Kindle Unlimitedで読み放題対象なので、ぜひチェックしてみてください。
著者:一穂ミチ (いちほ・みち)
大阪府出身・大阪市在住の小説家。2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビューし、BL作品を中心に執筆。代表作『イエスかノーか半分か』は劇場版アニメ化され、多くのファンを魅了しました。
2021年には一般文芸デビュー作『スモールワールズ』を刊行し、吉川英治文学新人賞を受賞。さらに2024年には『光のとこにいてね』で島清恋愛文学賞、『ツミデミック』で直木三十五賞を受賞し、文壇での評価を確立しました。
繊細な心理描写と、日常に潜む“ままならなさ”を描きながらも、人々への温かな眼差しを忘れない作風が特徴。BLから一般文芸まで幅広く活躍し、今や現代文学を代表する注目作家のひとりです。
あらすじ
プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。
カメラマンの新夏は啓久と交際5年。東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。啓久が“出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。
信じるとは、許すとは、愛するとは。
男と女の欲望のブラックボックスに迫る、
引用元:Amazon
著者新境地となる恋愛小説。
感想
『プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。』という設定は衝撃的すぎます。最初は“絶対なしでしょう”と思いながら読んでいましたが、ふたりのやりとりや男性側の立場を追ううちに、何が正解かなんてわからなくなり、文字通り心を揺さぶられました。
新夏の『男性の気持ちをわかりたい』という切実な思い。どんな状況でも犯してしまった過ち。どんな言い訳をしても信じてもらえない、失った信用の重さ。これらがひしひしと伝わってきて、“自分だったらどうするだろう”と考え、人にも意見を聞きたくなるほどでした。
盗撮の被害にあった高校生が、最も印象に残った人物です。小説終盤の彼女のセリフ
『尊重されるのって、いいもんだね。しみじみするね。忘れないからね』
は、彼女の人生を物語っていて胸が痛くなりました。
もう少し時が経ったら、また読み返したいと思える小説です。










