紗syaホラーなのに笑える。笑えるのに、ちょっとゾッとする。
そんな不思議な魅力を持つ監督、クリストファー・ボルグリ。
今回は、彼の作品を2本ピックアップしてみました。
クリストファー・ボルグリについて
クリストファー・ボルグリ(Kristoffer Borgli)は、1985年生まれ、ノルウェー・オスロ出身の映画監督・脚本家。
2012年に短編『WHATEVEREST』で注目を集め、2017年には長編『DRIB』で監督デビューを果たしました。
代表作には、自己愛と承認欲求に取り憑かれた女性を描いた『シック・オブ・マイセルフ』(2022年)、
そして“夢に現れる男”という奇妙な現象を描いた『ドリーム・シナリオ』(2023年)などがあります。
彼の作品は、ホラーの枠に収まりきらない不気味さと、思わず笑ってしまうような風刺が同居しているのが特徴。
現代社会の歪みや人間の欲望を、冷静かつユーモラスに切り取るその視点に、じわじわと惹かれる人が続出しています。
シック・オブ・マイセルフ
| 原題 | Sick of Myself |
| 監督 | クリストファー・ボルグリ |
| 出演 | クリスティン・クヤトゥ・ソープ、エイリック・セザー、ファニー・ベイガー |
| 上映時間 | 97分 |
| 製作国 | ノルウェー・スウェーデン・デンマーク・フランス合作 |
| 公開年 | 2023年 |
| ジャンル | ホラー、コメディ、ドラマ |
あらすじ
シグネの人生は行き詰まっていた。長年、競争関係にあった恋人のトーマスがアーティストとして脚光を浴びると、激しい嫉妬心と焦燥感に駆られたシグネは、自身が注目される「自分らしさ」を手に入れるため、ある違法薬物に手を出す。薬の副作用で入院することとなり、恋人からの関心を勝ち取ったシグネだったが、その欲望はますますエスカレートしていき――。
引用元:Amazon
感想
この映画は、ビジュアル的にも精神的にも、見ていてかなり辛い場面が続きます。
違法薬物の副作用が肌に現れる描写は、悪化するたびにゾッとするし、
「とにかく私に注目して!!」と叫ぶような主人公の幼さが、痛々しくもあり、どこか笑えてしまう。
でも、ふと気づくんです。
自分も含めて、大人だからこそ露骨には出さないけれど、
誰かがあまりにも注目を集めていると、なんだか“つまんない”って感じる瞬間って、きっと誰にでもある。
そんな感情をこの作品は、じわじわと刺激してくる。
そして、主人公の恋人もまた、なかなかのクセ者。
お互いに思いやる気持ちはほとんどなく、「自分が、自分が」とぶつかり合う二人。
でもその自己中心的な性質こそが、他の人には理解できない絆を生んでいて、
なんだかんだで離れられない“お似合いカップル”に見えてしまうのが不思議です。
痛くて、笑えて、ちょっと自分の心もえぐられる。
そんな不思議な後味が残る作品でした。
ドリーム・シナリオ
| 原題 | Dream Scenario |
| 監督 | クリストファー・ボルグリ |
| 出演 | ニコラス・ケイジ、ジュリアンヌ・ニコルソン、リリー・バード |
| 上映時間 | 102分 |
| 製作国 | アメリカ |
| 公開年 | 2024年 |
| ジャンル | スリラー・サスペンス |
あらすじ
ごく普通の暮らしをしている大学教授のポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)。平々凡々とした日常を過ごしていたが、ある日、何百万という人々の夢の中に一斉にポールが現れ、一躍有名人に。ポールはメディアの注目を集め取材を受けながら得意げになっていく。夢だった本の出版まで持ちかけられ、天にも昇る気持ちだった。しかし、そんな夢のような日々は突然終わりを告げる。夢の中のポールが様々な悪事を働くようになり、現実世界で大炎上。コントロールの効かない夢の中のポールは人々のトラウマの対象となってしまう。
引用元:Amazon
感想
これは、かなり好きな作品。
夢って、ただの脳内現象と思いがちだけど、実は人の感情や関係性に深く影響する力を持っている。
この映画は、そんな“夢の力”の不条理さとリアルさを、ユーモラスかつ不気味に描いていて、見ていてゾクッとする。
例えば、全然意識していなかった異性が夢に出てきたら、急に気になってしまうことってある。
逆に、夢の中でひどいことをされたら、現実では何もされていなくても、その人に嫌悪感を抱いてしまう。
理屈では説明できないけれど、感情は動いてしまう。
そんな“夢が現実を侵食する感覚”が、この作品では見事に表現されている。
製作に「ヘレディタリー/継承」「ミッドサマー」のアリ・アスターが関わっているというのも納得。
不穏さとユーモアのバランスが絶妙で、観終わったあともじわじわと余韻が残る。
夢って、こんなにも人を動かすんだなと、改めて思わされる作品でした。









