おすすめ映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』

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  • 原題 : The Capote Tapes
  • 監督:イーブス・バーノー
  • 出演:トルーマン・カポーティ, ケイト・ハリントン, ノーマン・メイラー
  • 上映時間 :1時間38分
  • ジャンル:ドキュメンタリー
  • 2019年(アメリカ・イギリス合作)

あらすじ

 作家トルーマン・カポーティは若くして成功し、オードリー・ヘプバーン主演で映画化された「ティファニーで朝食を」などの作品で注目される。彼は、ゲイであることを公言する一方で、多くの作家や著名人らと交流を持ち、ニューヨークの社交界を席巻する。そして、未完に終わった新作「叶えられた祈り」ではニューヨークの上流階級の実態を描き、物議を醸す。

シネマトゥデイ

感想

 この作品をテレビで紹介されていたのを見たときに「この人がカポーティなの?」と衝撃を受けた。カポーティがどういう人かと想像していたわけではないけれど、なんか意外だった。「ティファニーで朝食を」を書いた人…..

誰も僕を愛してない
僕は奇人だ
みんな面白がるし魅了されもするが愛してはくれない
君には分かるまい
僕の姿を見た時の人々のギョッとした顔
本人たちは気付いていないがね
だから僕はバカみたいに騒ぎ
キーキーわめいてやる
彼らをバツの悪さから救ってやるためだよ

映画「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」

 友人のスリム・キースがこの映画の中で証言したカポーティの言葉。なんて悲しいことを言うんだろうと思った。でも私もそのギョッとした人の中の一人ということなのか…..
 この映画はまず、カポーティの養女ケイト・ハリントンのインタビューから始まる。彼女は13歳の時、カポーティに引き取られた。初めてカポーティに会ったケイトは彼の声と話し方がおかしくてたまらなかったという。確かに特徴的。同じく外見も特徴的でデビュー当時は「小さな妖精ごとき南部の美少年」というイメージだったらしい。若いカポーティの写真は中性的で人を惹きつける、それでいて挑んでくるような表情をしている。

 その後、作家として成功し、名声を得たカポーティはニューヨークの社交界の一員となる。その社交界で美しく洗練されていた女性数名をカポーティは「スワン」と名付けた。その「スワン」と呼ばれる人たちのカッコいいファッションと美しさを見られるだけでも、この映画を見る価値があるほど。カポーティは社交界のパーティの「盛り上げ役」として人気者だった。しかし、当時は、同性愛は受け入れられておらず、カポーティを見下し、嘲笑う人もいた。

トルーマンからすれば、自分が「主人」だった。
だが、やがて分かったんだ
実は「下僕」とみなされていると
彼は打ちのめされた

映画「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」

 それでもカポーティは、6年近くの歳月をかけて「冷血」という傑作を世に生み出し、幅広い読者層をさらに獲得する。その後、問題作の「叶えられた祈り」の一部を発表する。その内容が今まで自分も身においていた社交界の暴露話だった。読めば誰であるかわかったという。そのことで社交界の反感を買い追放され、酒と薬物に依存していく。そんな状態でのテレビ出演の映像は見ているのも辛くなるほど。そして59歳で亡くなってしまう。作家ノーマン・メイラーがカポーティについて、こう語っている。

彼は人生の勝者かもしれない
不幸な生い立ちに負ける者もいる
低い身長 不利な条件
同じ立場なら ほぼ全員 潰れただろう
大成せず 悲しい人生を送る
彼は ものともしなかった

映画「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」

 この映画の最後のエピソードがすごく好き。カポーティは親戚のスックさんが作ったジンジャークッキーを生涯手放さず、どこに行くにも持ち歩いていたという。スックさんというのは、カポーティの「クリスマスの思い出」という作品に出てくる女性のモデルになった人。「クリスマスの思い出」は7歳の少年と60代の女性の温かくて美しくて、胸が痛くなる物語。過酷な幼少期を生きてきたカポーティにとってスックさんとの日々がどれだけ大切で救いとなっていたかがわかる。「クリスマスの思い出」があんなに美しいのは、カポーティが作家として成功して社交界でもてはやされようが、ずっと心の中で大切に大切に守ってきた物語だったから。昔から「クリスマスの思い出」が大好きだったので、この映画の中で当時のカポーティとスックさんの写真が見られたのは嬉しかった。

 集められた映像の中のカポーティはいつも明るく楽しそう。この作品はその裏の顔になんとか迫ろうとして興味深く見られる。カポーティの本を読んだことがある人は、その背景やエピソードなどがわかって、とても面白いと思う。でもカポーティをあまり知らなかった人でも「人たらし」だったというカポーティの魅力に惹きつけられて、彼の本を読んでみたくなるかもしれない。

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