原題 | Turist |
監督 | リューベン・オストルンド |
出演 | ヨハネス・バー・クンケ、リサ・ロブン・コングスリ、クリストファー・ヒビュ |
上映時間 | 118分 |
製作国 | スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー合作 |
製作年 | 2014年 |
ジャンル | コメディ |
あらすじ
フランスの高級リゾートにスキー・バカンスにやってきたスウェーデン人一家4人。父親のトマスは、普段忙しい仕事から離れ、家族サービスに精を出す。しかし、バカンス2日目に人工雪崩が発生。トマスが見せた“期待はずれの行動”は、エバと子供たちを大いにガッカリさせ、家族の間の空気がぎくしゃくし始める。エバはトマスの行動について問いただし、夫婦の関係が悪化。子供たちも反抗的になり、「理想のパパ」の座を取り戻そうと必死にあがくトマス。バカンスは5日間しかない中で、家族の絆を取り戻せるのか?
感想
同じ監督の「逆転のトライアングル」もかなり性格が悪くて好きな作品だったけど、やはりこちらの作品も同じ血が流れていて正確が悪い。どちらも、出来れば見たくなかった人間の弱くて醜悪な本性をこれでもか!と日の目に晒す感じが似ている。でも、そこが観ている者の心に引っかき傷を残していろいろ考えさせられてしまう。
この「フレンチアルプスで起きたこと」は、一応コメディということらしい。とにかく気まずい空気がずーっと張り詰めていて、その気まずさがおかしい。すごくおかしいんだけど、同時にうすら寒い。なんか怖い。
レストランで食事中に雪崩が起きた時、家族を残し自分だけ逃げた(またその逃げ方が酷い)父親トマスへの不信感は相当なもの。結局、大事には至らずトマスは席に戻ってきて、何事もなかったかのように振舞い、妻エバも子供も何も言わない。そこですぐにエバや子供がトマスを責め立てれば、もう少しカラッとした空気だったと思うけど、エバはショックのあまりか無言で食事を続ける。その後、その怒りは燻り続け、他人をも巻き込んでトマスをじわじわと追い込んでいく。トマスは、最初逃げたことは認めないし、泣き真似するし、「頼れる理想の父親」像とは程遠く、そんな自分の醜さに一番驚いていたのはトマス本人だったよう。もし雪崩がもう少し小さかったら一生誰にも知られなかったかもしれない一面をさらけ出してしまった悲劇が俯瞰して見ると喜劇になるところが面白い。が、自分事で考えると恐ろしくなってくる。
ラストはスッキリ感はないが、その分いろいろと想像して余韻も楽しめる。人に薦めて感想を聞きたくなる作品。