小説『静かな雨』 宮下奈都(著)

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読書家カズレーザーさんが1位に選んだ小説

  • 著者:宮下奈都
  • 発行年:2016年
  • 2020年映画化
    監督:中川 龍太郎
    出演:仲野太賀、衛藤美彩、三浦透子

あらすじ

 あるクリスマスに会社が倒産すると告げられ、昼過ぎに会社を出た行助は、最寄り駅の近くにある、たい焼き屋を見つける。そこで美味しいたい焼きを作っている、まっすぐな目をした可愛い、こよみと出会う。行助は新たに大学の研究室の助手の働き口を見つけ、そのたい焼き屋へ通う。こよみと行助、二人の距離が少しずつの近づいていく中、こよみは交通事故による記憶障害になり、次の日には今日起きたことを忘れてしまう。

感想

以前、「絶対カズレーザー」というテレビ番組で大手出版社の編集者3人がカズレーザーさんに今一番売りたい小説をプレゼンをして一番おもしろかった本を選ぶ…というコーナーがあった。その中で「恋愛・青春小説編」で下記3冊の中でNo1に選ばれた小説。

 ・旅猫リポート  有川浩(講談社)←こちらもこの番組の影響で読んだけどすごく面白かった。
 ・静かな雨    宮下奈都(文藝春秋)
 ・か「」く「」し「」ご「」と「   住野よる(新潮社)

カズレーザーさんの感想が「何かすごいことが起こるわけではないけれど、なんだかとても読んでいて心地よく、読んだあとちょっと元気になる」みたいな感想がすごく気になったので、すぐに本屋さんに駆け込んだ。
 本屋大賞を受賞した「羊と鋼の森」の著者のデビュー作。第98回文學界新人賞の佳作に入選。ウィキペディアによると3人目の子供を妊娠中に自分の時間がなくなってしまうことへの焦燥感の中執筆した作品とのこと。


 
ベタだけど雨の降っている週末に何度も読んだ。何度も読み返すのにちょうどいい物語の長さ。読むたびにこの本に漂う空気が好きだなぁと思う。大きな事故があった衝撃も、こよみの記憶が1日しかもたないことに苛立っていく行助のシーンもどこか静か。その静けさを伝って読者の心に染み入ってくるかんじ。行助の家族もたい焼き屋のお客さんもすぐに魅了し、何が起きても動じない凛としているこよみが「月が明るいのに雨が降ってる」と泣くシーンは綺麗で儚くて切ない。

 こよみさんは静かに泣いている。眠れば消えてしまう月。その光に照らされて雨が降りつづいている。僕は白い月のこちら側に細い細い雨が降っている様子を思い浮かべた。こよみさんは静かに泣きつづけている。

引用元:静かな雨


 ラストも穏やかな二人らしい日常のシーンだけど、行助が迷い、苦しみながら行き着いた「思い」がとても温かくて、優しい気持ちにさせてくれる。